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編集者になりきれなかった30男のお仕事不定期日報


by juunf_ex

明日からはもう、赤ペンはいらない

その場所を去るために、机を掃除する。何度やっても僕はすがすがしい気持ちでこれをした事がない。決まって休日の朝、夜、だれもいなくなったオフィスから夜逃げのように今では不要となった資料やきっと手元にもっていてもひらくことのない本を仕分けたりしてる。僕の、少なくともこの会社での編集者としての仕事は終わった。これからは、外部のカメラマンのスケジュールを押さえることもしなければ、校正のチェックをクライアントにまわすこともなくなるのだろうか、献本したり、取材したり、ラフ書いたり、そんな技術を発揮する場所はもう、この会社にはなくなってしまった。「今よりはラクになるんじゃない」偶然出会った社内カメラマンが僕に声をかける。そうだ、今がつらいから、他にまわるんですよ。仕事ができないんですよ。そんな意図はないのだけれど、誰もが僕にそう思っているように聞こえてくる。動けていなかった、こだわりも失ってしまった。人にあまく、自分にあまく、家庭をかえりみず、僕はいったい誰の、何のために、この会社に来たのだろう。前の会社、しかかりの著者本を放り投げて、元の会社に迷惑をかけて、著者に迷惑をかけて、恩師に負担をかけて、そこまでして、追い求めた場所も結局イヤなことから目を背けるように去っていく自分が醜くて仕方がない。だから、この会社に残る。再スタートをきるなら、このタイミング、この職種しかなかったのだ。編集者としての自分のスキルをいかしながら、web編集者として、変わってみたい。例えば3年後、月刊誌の編集として、毎月自分の時間をキリウリすることよりも、3年後、web編集のワークフローを学び、いかせるようになることが、プラスとなるのではと考えた。簡単なことではない。けど、今の自分のまま、たとえば、自分のコドモに会いたくはないと思った。いつも時間におわれながら、余裕のない顔でいる、そんな親の顔を子はどう思うだろう。いくらなんでも、それはかわいそうだし。
   この仕事を大好きだった。初めて取材にいったとき、就職活動中でリクルートスーツだった。はじめての雑誌社、担当のやさしいけど厳しい女性編集者、先輩女性ライター、みんな厳しく素人の僕にいろいろ教えてくれた。編プロ時代の先輩。いいかげんだけど、読者のことをいつも最優先だった。いつだって、忙しい自分が楽しくて仕方がなかった。今、目の前に座る女性編集者をあの頃の自分と重ね合わせる、自分の時間すべてを仕事に捧げても、合間に時間をつくって、どん欲に生きていた。もう、あんな情熱は失ってしまった。誰かと比較しても意味がない。でも、どうしても納得できなくなってしまった。
  明日からはもう、赤ペンはいらない。
by juunf_ex | 2007-04-09 02:11